売れる(任される)準備ができているか

好きな劇作家として、小林賢太郎がいる。彼の著書『僕がコントや演劇のために考えていること』を読んでみると、「つくり方をつくる」など舞台に関わることのない人にも参考になるフレーズが散りばめられている。その中でもわりと気になったフレーズが次のもの。

売れる準備ができているか

芸人として売れたときに、いまだかつて挑戦したことのないような新しいチャンスが増える。その段になってから挑戦するのではなく、売れる前から準備をしていれば、慌てることもない。だからこそ、売れる準備を意識したうえ日頃を過ごしている人は強いのだ。

下積みは、売れるための蓄積だけでなく、売れたあとまでの貯金をつくっておくためにあるものだと言えるかもしれない。

とはいえ、ぼくらは芸人ではないので、「売れる」という感覚はなかなか親しみを持ちにくい。そこで少し言葉を変換してみて、「売れる」を「任される」として考えると、一般化できるのではないかと思う。

「任される」はいろんな受け取り方ができる。今までやれなかった仕事を任される、先輩として後輩の指導を任される、子守りを任される、あるい、会社を任される、など、(信頼ありきで)人から人へと任すようなやり取りは日常茶飯事でないだろうか。

ここで小林賢太郎の「売れる準備」をぼくなりに転用してみると、「なにかを任されてから、そのやり方を考える」のではなく、「それを任されることを見据えたうえで、イメージトレーニングしておくこと、今まさにそれをやっている人のやり方を観察すること・盗むこと」をやっておけるとよいことになる。

センスの塊でないかぎりは、時間がかかる。例えば、会社の中で(役職として)上司になったとしても、いきなり上司になりきれるわけでない。立場が変わることによって、どのように振る舞うかどうかは変わる。言ってみれば、最初は上司見習いから始めるわけだ。そうなったときに、その見習い期間を早めるためにも、部下時代からしっかりとよい上司の振る舞いを観察しておくことはよい準備なのだろう。

つねに“当事者意識”を持って、「あの立場・状況になったら自分ならこうする」というケーススタディができている人は、今でなく未来を見ている。実は、スタートを切る前の準備で、ある程度の結果は見えちゃうのかもなぁ。目先のことばかりに捕われてしまうのではなく、ちょっと先を見据えて、虎視眈々と、せっせと準備をしていくこと、それこそ必要なんじゃあないか。

バーテンダー時代に「準備8割」と師匠にこっぴどく言われていたことが脳内に響きわたる、今日この頃です。